最近では直葬といったかたちでの葬式も増えているそうですが、遺言にしたがって直葬にしたものの、残された遺族の心の整理がつかずに苦しんだという話も見かけます。
弔いというのは、宗教的な意味合いを除いて考えると、儀式や雑務を通して、残された方が哀しみを紛らわせ、心を落ち着かせて行くための、大事な仕組みだと思うのです。
そういった思いから、今までとは少し違う目線での弔いのかたちを考えたくて「想い出の木」を制作しました。
- 花瓶「供える」「生ける」「愛でる」
- 遺骨を墓に納めるのではなく、かたちを変えて側に置いておきます。
骨の主成分であるリン酸カルシウムは、色ガラスの白に利用されています。
色ガラスで使われている白は死を緑は生を意味しています。
- お菓子「食べる」「刻む」「しまう」
- 木製の菓子箱に詰められているのはリーフパイ。
亡くなった方をを想う時間を作ります
箱の蓋は彫ることができるようになっています。
生前やり取りした年賀状や手紙などを中にしまっておきます。
- なた豆茶「煎じる」「飲む」「育む」
- 加工してお茶として飲むことができます。お菓子とお茶で想う時を作ります。
また、なた豆は育てることもできます。
世話をするたびに、亡くなった方を想うきっかけとなります。
- 紙袋「守る」「抱く」「運ぶ」
- 本体部分はレースで、つたの葉で飾られています。
遠くから見るとレース部分が透け、緑を持ち帰っているように見えます。
帰宅は、死に触れて生と帰る(還る)ための儀式となります。
- 想い出の木(web)「辿る」「綴る」「分つ」
- 遺された方が、故人の想い出を書き込むものです。他の方の想い出を見て、連想して出て来る想い出など。
自分が知り得なかった出来事や想い出を共有し、遺された方の心の慰めになることを祈っています。
コンセプトに書いたように、故人の想い出を連ねて行くwebコンテンツです。
匿名も可能ですし、非公開にすることも可能です。ご意見などをお気軽に書き込んで下さい。
葉をクリックすると入力フォームが表示されます。
書き込むと、葉が一枚追加されます。
利用にはFlash Playerが必要です。
想い出の木はこちら
- 名前
- うえだよしこ
- 住処
- 大阪市
- 誕生
- 1997年7月生まれ
- 2004年
- 大阪芸術大学通信教育学部デザイン学科入学
- 2012年
- 在籍9年目でようやく卒業制作に着手
- 2013年
- 卒業制作「想い出の木」完成
素材・制作環境など
Photoshop CS6、Illustrator CS6、Flash Professional CS6、PHP5、PostgreSQL
ガラス作品の制作は、谷町Hono工房に9月から1月まで通い、作りました。
9年という長い在籍期間の中で沢山の方と出会いましたが、一番仲良くしていて、素敵な制作をするな、と一番尊敬していたクラスメイトが、亡くなりました。
通信制の大学ということもあり、死を知ったのは、彼女が亡くなってひと月してからでした。
お悔やみに伺った時に、お子さんを亡くしたご両親の気持ちに触れ、心が痛みました。
あれから、2年になります。
木に、ツタが巻き付いている風景って、よく見かけますよね。
ツタに覆いつくされて、もう木は見えなくなっても、ツタのかたちで木の有り様を見ることができます。
人がこの世からいなくなってしまったとしても、その人が回りに与えた影響や、思いは、残ります。
それが、その人の生きていた証だと思うのです。
そういったことを表現したくて、このようなテーマとなりました。
仕事との両立は大変でしたが、手を抜きそうになる自分に「彼女だったらそれはしないだろうな」という思いで、作りました。
私の中に、彼女は確かに生きています。